手を出せば触れる(噛まれる)ほど至近距離で、

一生の不覚。生まれて初めて出会ったのに、カメラを持っていなかった。

本日仕事帰り、会社近くのダム湖がある自然公園内を練習中、右手の山裾でガサガサと音がした。トカゲか蛇かウサギか鹿なら、珍しくもないから普通知らん顔して走りすぎるのだが、動物の気配をまだその付近に感じたので、10m程忍び足で引き返し下生えの中をのぞいてみた。キツネに化かされたかと思ったが、アナグマだった。
しゃがみこんで「おいおい アナグマちゃん」などと間の抜けた声を掛けるが、逃げるそぶりもない。車内にグレープフルーツと柿の種があったのを思いだし、往復300mをダッシュ。野生動物に餌付けするのはよくないと言うが、なに、構うことない。

2分後、同じ場所にアナグマはいた。グレープフルーツの皮を剥きながら、ツタや潅木が中密度に生い茂った下生えを、アナグマの正面から枝をボキボキ掻き分けて近づくが、鼻をうごめかしながら頭を小刻みに上下するだけで、まだ逃げない。もしかして怪我でもしているのかな?猟期は終わっているから、密猟の罠でも引きずっているんだろうか?と思うが、厚い冬毛の毛皮は根元から立ち上がって綺麗なもんだ。鼻先に皮を放ったが、びくっとしただけ。

調子に乗った。
実をひと房手に持ち鼻先に近づけると、アナグマが怒った。息を吐き、両前足を地面に打ちつけて一歩つめよった。怖い~と房を放り投げる。噛まれたら絶対指ちぎられるー。大の人間一人は、たかが太った猫程度の小さな動物より弱いらしい。
グレープフルーツを枯れ木の小枝に突き刺し、アナグマの前へ・・・ 猫が喉を鳴らすのに似たシューシュー怒りの声を上げ、上体をずらすと片方の後肢が体の下に伸ばすようにあり、「あぁやっぱり脚が悪いのかな?」と思ったが、地面の穴に片足を突っ込んだようにも見える。
そのうちしつこい人間に嫌気が差したのか、悠揚迫らぬ様子で退却していった。昔はムジナと呼ばれてタヌキと混同されたというが、タヌキとはまるで異なる地平な体型、左右にローリングする独特な歩様だったが、肢が悪いようには見えなかった。分かりにくい例えかもしれないが、甲羅が丸いアルマジロを連想するような。
アナグマが気の強い動物だということは知っていたが、こうした身近に生息しているとは今まで全く知らなかった。

そこからの帰りの峠道を運転中、道路を横切る小動物がいるので減速すると、こちらは皮膚病でほぼ全身が象皮状になったタヌキだった。「あっしには関わりのねぇことでござんす」と心中でつぶやき発進すると、気のせいかも知れないが、しばらく追いかけてくるように見えた。
日が暮れはじめたトワイライトゾーンは、いろいろな野生動物が活動を始める時間だ。かつてつづら折れの未舗装の林道を駆け下っていたら、道の真ん中でくんずほぐれつしている2匹のタヌキに出くわした。タヌキは慌てて藪の中に走りこんだけど、間抜けなことに、私が行く手の道の上で再び取っ組み合いをしているのだった。

帰宅して調べてみた。アナグマは日本では本州・四国・九州に住む夜行性の動物。毛皮はあまりよくない。いわゆるタヌキ汁と言われるのはアナグマの肉らしい。
おそらく殆ど知られていないと思われるが、タヌキは天然記念物の動物だ。但し全国で、山口県・向島のタヌキに限られる。他の地域限定天然記念物動物としては、奈良の鹿もそう。
高校時代、隣町の友達の家に遊びに行く途中、タヌキ猟師と思しきおっちゃんが、庭先でタヌキの皮を剥いでいたのが思い出される。タヌキの冬毛は防寒に優れ、増井光子さんの本によると、死んだと思って-30℃の冷凍庫に入れていたタヌキが、一ヵ月後に生きていたという記録が書かれている。自宅にもタヌキの毛皮が一枚ある。車にはねられ死んでいたのを、父親が剥製業者に持ち込んでなめしてもらったもので、頭と手足がついている。
大阪の異なるペットショップの店頭でタヌキを見たことがあるが、それらはいったいどういった個体だったのだろう。片方は岸和田の犬屋でタヌキとアライグマがおり、アライグマは事故を起こしやすい危険な動物で、タヌキは・・・と聞いた覚えがあり、もう一方は総合ペットショップで、目が赤く鼻もピンク色したアルビノのタヌキだった。


※ 天然記念物の意義は、①日本列島のなりたちを知るうえで不可欠な自然 ②日本の風土や文化を育んできた自然 ③日本人が関わり、作り上げてきた自然(小学館・日本の天然記念物より)

こんなアナグマ
『オオウミガラスの最後』という素晴らしい本を執筆した、アラン・エッカートの著作に、アナグマと少年の交流を描いた『大草原の奇跡』がある。元はシートンの短編を、拡大・展開させたものだと思われるが、西部開拓時代に起こったアメリカの実話がベースになっているようだ。個人的には、興味深い題材を惜しげもなく煮詰めてダイジェストにした趣がある、シートンの『少年とアナグマ』の方が好きである。
[PR]
by kimunegosiki | 2005-04-14 22:39 | 自然観察


<< ローリー小物 並んでネクターご飯を食すの図 >>